B-29には、数々の先進的な装置が装備されていました。

B29_Av_4409_cover_p001_W


その中でも特に先進的な装備が、リモコン銃塔とその制御システムです。

dbb425c8b277bf5a78986dab04a6f98d


B-29の銃塔は、機体前部の上下に1基づつ計2基、
機体後部の上下に同じく1基づつ計2基、尾部に1基の合計5基が装備されています。

CFC systemcontrol2


B-29の射手は、機体前部機体後部の中心と左右と尾部に5人が配置されていました。

後部与圧室の中心の射手が射撃指揮官で、

SnapCrab_NoName_2020-5-14_5-16-50_No-00

通称床屋の椅子と呼ばれる回転式の椅子に座っていました。


Gunnery_in_the_B-29-j2a


前部射手が担当するのが前方下部銃塔、
上部射手が前方上部銃塔、右側射手が後方上部銃塔、
左側射手が後方下部銃塔となっていましたが、

戦闘の状況に応じて、
別の射手に担当を譲る事が出来るという当時としては、
非常に先進的なシステムを有していました。

この射撃システムについて解説します。

●照準器について


b29_sight_ped_gif


各射手は、このようなサイティングステーションと呼ばれる
大型の照準器を操作して敵機を狙います。

B-29の射撃システムの画期的な点として、
敵機を照準器のレチクル内に捉え続けると、自動的に見越し角が計算されて、
敵機の未来位置に向けて銃弾が飛んでいくように、
銃塔の向きが決められるという事です。


まずは、このダイヤルを動かして敵機の翌幅に相当する数字をセットします。

e573fac1-s


例えば40と言う数字は、40フィートを表していて、
これはだいたい戦闘機の翌幅に相当します。

この数字が、敵機との距離の基準となります。

照準するときは、左右のダイヤルを両手で持って、
上下左右に動かしながら、敵機をレチクル内に捉えます。

その時、左のダイヤルから飛び出ているアクションスイッチを、
手のひらで押さえておく必要があります。

b-29-superfortress-gunsight-b29-bomber


一種の安全装置のようなものでしょうか。

右側のダイヤルの内側にある一回り小さなダイヤルを回すと、
レチクルが拡大縮小します。

そしてこのレチクルに敵機をぴったり捉え続けることで、
距離の変化を測ることができます。

左右のトリガーのどちらかを親指で押す事によって、
機銃を発射するようになっています。

通話ボタン(Push to Talk Button)ボタンを押すと、
他の射手とインカムで会話まで可能となっていました。


●銃塔と照準器を同期させる仕組み

照準器を動かすと、銃塔も同じように動きますが、
これはどういう仕組みになっているのでしょうか。

銃塔と照準器の動きを同期させるために、
セルシンと言う装置が使われています。

673dc744


これは、2つのモーターの片方を回すと、
もう片方も同じように回るという装置で、
銃塔を開発した、GE社(ジェネラルエレクトリック社)製です。

ちなみにセルシンという名称は、GE社の商標となっています。

このセルシンにより照準器と銃塔の動きがシンクロします。

でも完全にシンクロしていては、偏差射撃にはなりません。

偏差射撃とは、高速で移動している敵機そのものを狙っても、
銃弾が敵機の位置まで飛んでいく間に、その位置から飛び去ってしまうので、
弾は敵機の後ろを通り過ぎてしまいます。

そこで、敵機の前方の空間を狙って撃つ必要があるわけです。
これが偏差射撃です。

しかしこの偏差射撃は、敵機と銃塔との距離や角度、
速度など多くの要素を考慮して、
適切な前方空間に向けて射撃しないと命中しません。

当然、敵もこのことを知っているので漫然と直線飛行などせずに、
旋回しながら接近してきます。

刻々と変化する敵機の位置を見極めて、未来位置へ向けて射撃するには、
かなりの訓練や経験が必要となることが想像できますね。


B-29の射撃システムでは、照準器のレチクル内に捉えるだけで、
この難しい偏差射撃を自動的に行えるのです。


●偏差射撃

偏差射撃を分かりやすく解説しているのが、このイラストです。

SnapCrab_NoName_2020-5-14_3-50-41_No-00


新聞配達の少年が自転車で走りながら玄関先に新聞を投げ込む様子ですが、
走りながら玄関を狙って投げても、
全然違うところに飛んで行ってしまう事を表しています。。

つまり玄関先に投げ込むには、大分手前を狙って投げる必要があるという事ですね。

SnapCrab_NoName_2020-5-14_3-54-54_No-00

駐機している機体に向かって機銃掃射する場合も同じように、
大分手前を狙う必要があるという事です。
SnapCrab_NoName_2020-5-14_4-0-4_No-00


次に、こちらへ向かってくる敵機を狙った場合は、弾は前方へ逸れてしまいます。
だから、さらに前方を狙う必要があります。

ちなみに発射された弾丸は、距離が遠くなるにつれてだんだん落ちていきます。

例えば、初速750メートルで発射された弾丸は、500メートル先では、
2.85メートルも落下することになります。

これらを考慮して、何もない空間に向けて撃たなければならないと言う事です。

SnapCrab_NoName_2020-5-14_4-14-49_No-00


このイラストは、敵機が接近してくるのを銃座から見たイメージです。
このように3次元空間を高速で移動している敵機の上下左右の動きを見極めて、
未来位置に弾を撃ち込む必要があります。

何もない空間に向けて撃つのは、感覚的にも抵抗がありそうですね。

つまり旋回して接近してきた敵機には、
当てるのが非常に難しい事が想像できます。


●自動偏差射撃の仕組み

このように多くの条件を考慮しなければならない偏差射撃を、
どのようにして自動化しているのでしょうか。

まず、最初に説明したように照準器に敵機の翌幅の幅をセットします。
これが敵機との距離を測るための基本データとなります。

ダイヤルを回しながらレチクル内にぴったりと敵機を捉えるように、
拡大または縮小させることで、距離を測るようになっています。

B29_IA_4503_armament_gunner_p027_W


そして照準器の上下左右の動きから、敵機との相対速度が測られます。
これは照準器内にセットされているジャイロによって
検出された加速度が基となっています。

●アナログコンピューター


これらの要素を入力して計算するのが、。
ジェネラルエレクトリック社の、2CH1C1とD1いうアナログコンピューターです。

SnapCrab_NoName_2020-5-16_14-29-48_No-00
SnapCrab_NoName_2020-5-16_14-30-23_No-00


各銃塔用に1台、全部で5台機体後部の床下に装備されていました。

SnapCrab_NoName_2020-5-14_5-21-28_No-00


未来位置を計算するために必要なデータは、


1.照準器からの方位角と仰角

2・レチクルの拡大縮小による敵機までの距離

3.敵機との相対速度(照準器の2つのジャイロにより供給される)

3・対気速度、密度高度(航法士が入力)


等となります。

これらのデータが電気信号として入力されて、
修正された方位角と仰角がリモコン銃塔へ送られるようになっていました。
B29_Av_4509_Turret_fig1_p133_W



このアナログコンピューターは、
※オペアンプという加算減算微分積分が出来る回路の組み合わせだと思われます。

SnapCrab_NoName_2020-5-16_14-30-43_No-00
コンピューターの内部

たとえば、照準器の上下左右の動きをジャイロで検出すると、
加速度にあたる電圧の変化が得られて、

それをオペアンプで組まれた積分回路に入れると、
加速度を積分して速度に当たる電圧の変化に変り、
その電圧の変化を基に、方位角と仰角を決めているといった具合です。

SnapCrab_NoName_2020-5-16_14-16-50_No-00
コンピューターの回路図






※オペアンプはOperational Amplifier (オペレーショナル・アンプリファイヤー)
「演算増幅器」


※ゆっくり解説もやっています。




B29撃墜記 (光人社NF文庫)
樫出勇
潮書房光人新社
2013-08-02