●通常の銃座での射撃法

リモコン銃塔と自動偏差射撃システムは、非常に先進的でしたが、
B-29以外の爆撃機ではどのようにして射撃をしていたのでしょうか。

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通常の射撃では、射手が敵機の動きを見極めて、
未来位置へ向けて弾を撃ち込む必要があります。

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未来位置を決めるために、
環状照準器で捉えた敵機の大きさや飛行している方向から、
距離と速度を判断して修正量を決めなければなりません。

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旋回しながら近づいてい来る敵機に対しては、
刻々と変わる修正量に対して的確な未来位置に射撃するという、
非常に難しい技術が求められます。

これは、個々の射手により能力の差があることが、窺えます。

かなりの訓練と経験が必要だったと思われます。

この偏差射撃の自動化システムを実用化したアメリカの技術力に驚かされます。


●搭載機関銃


銃塔に装備されている機関銃は、口径12.7ミリのAN/M2という、
米軍の定番機関銃です。

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米陸軍も海軍も機関銃と言えばこれしかないのか、
というほど広範囲で使用されていました。

米軍戦闘機は、陸軍も海軍もこれを左右の翼に3丁ずつ装備するのが
標準となっているかのようなほどです。

爆撃機の防御用も、ほぼすべてこの機関銃となっていました。

この機関銃の特徴は、初速が速くて弾丸が真っすぐに飛ぶ距離が長い、
いわゆる低伸弾道性が高いということです。

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当時から現代まで使われ続けている傑作機関銃の一つとなっています。

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銃弾の搭載量は、各銃につき500発となっていました。
全部で12丁なので、6000発積となります。

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20ミリ機関砲は、イギリスのイスパノ・スイザ HS.404のアメリカ仕様、
AN/M1という機関砲が装備されていました。

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この機関砲は、威力はあるものの信頼性がイマイチで、
装弾数も125発と少なくて弾道特性も違う事から、
早い時期に廃止されています。

現地改造で、12.7㎜機銃に交換されている機種もあるようです。


●射撃シミュレーター

アメリカには、巨大な射撃シミュレーターが存在していました。
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それが、ウォーラーフレキシブルガンナリートレイナー
(The Waller Flexible Gunnery Trainer)です。

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半円形のドーム型スクリーンに攻撃してくる戦闘機を投影して、
ダミー機関銃で射撃するシミュレーターとなっていました。

旋回しながら近づく敵機がリアルに見えるようになっているという優れモノでした。

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B-17やB-24のボールターレットや、
機体上部の動力銃座の訓練も可能となっています。

4人が同時にトレーニングできるようになっていたようです。

ビデオゲームが出る以前に、
エレメカという機械と電気仕掛けのゲーム機が、
デパートの屋上などに設置してありましたが、
あのエレメカの大規模で高度な物と言えるかもしれません。

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ちなみにこの装置を考案したウォーラー氏は、
後にシネラマを開発しています。

このシミュレーターの特徴は、
敵機が旋回しながら攻撃してくるのをシミュレートしていて、
しかも撃った弾が当たったかどうかも、判定してくれるようになっている事です。

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さらに機関銃の射撃音も出て振動もして、
撃った弾の数をカウントして評価まで出来るようになっていました。

どうやってそんな事が出来たのか?

その仕組みは、シミュレーターを動かすと敵機を投影するフィルムと同時に、
もう一つのフィルムが動いていて、このフィルムを使って当たり判定をしています。


フィルムを使って当たり判定とはどういうことなのか?

同時に動いている片方のフィルムは黒いフィルムで、通常は光を通しません。

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所々に小さな長方形の穴が開けられていて、
同じ形の穴が開いたバーと一致した時に、光源からの光が通過します。

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その光が光電池と反応することによって当たりと判定をしています。

つまりその黒いフィルムの穴の位置と言うのが、
敵機を撃つ時の未来位置に対応しているという事です。

このバーが、ダミー機関銃の動きと連動していて、
適切な位置に向けた時に、バーの穴とフィルムの穴が一致するようになっています。

命中判定時には、射手のイヤホンからビープ音が聞こえて命中したとわかります。

この時に、ちゃんと引き金を引いている必要があり、
引き金を引いているときに発射される弾の数もカウントされます。

しかもこれにはスコアリングシステムが付いていて、
なるべく少ない弾数で、命中すると高得点になると思われます。

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ちなみになかなか当てられない射手には一時停止して、
適正な位置を示すことが出来るようにもなっていたようです。

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このように、電気と機械仕掛けで非常に巧妙なシステムを作り上げているのに、
感心してしまいます。

これにはB-29用もあったようです。
このような射撃指揮官用の照準器が付いているのがわかります。

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これの当たり判定がどうなっているかは、情報が見つからなくて不明ですが、
照準器のレチクルで、
一定時間敵機を捉えたら命中になるとかいう仕組みかもしれません。


B-29の射撃訓練用には、こんなのとか屋外に胴体を模した銃塔があったり、
トラックの荷台に設置されたタイプもあったようです。

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逆さまになったショットガンが装備されています。

なぜショットガンなのか?
クレー射撃でもやるのか?

実は、射手の訓練の一つにクレー射撃があります。
見越し射撃を体で覚えるのに最適な射撃だからだと思われます。


しかもトラックの荷台から移動しながらクレー射撃をやる訓練まであります。

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このような事から、B-29のリモコン銃塔射撃訓練用にもショットガンが使われていた?
のかもしれません。

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とにかくアメリカには爆撃手の射撃訓練用の施設や、
トレーニング用のマシンが充実していた事は、間違いないようです。

●プライマリーコントロールとセカンダリーコントロール

ここからB-29の射撃システムの説明に戻ります。

前回説明したように、各銃塔には担当の射手がいますが、
それぞれの射手の視界の範囲は決まっています。

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敵機が死角に入った場合狙えなくなるから、
狙うことが出来る射手に担当を譲った方がより多くの弾幕を張れます。

また、射手が負傷して照準器を操作できなくなる事もあり得ます。

そんな時のために、2つの制御系が用意されていました。

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プライマリーコントロールが、
それぞれの射手が自分の担当の銃塔を使用する制御系で、
セカンダリーコントロールが、
自分の担当以外の銃塔も使用できる制御系です。

セカンダリーコントロールでは、
前部射手が前方上部と下部の銃塔、上部射手が前方上部と後方上部の銃塔、
右側射手が、後方下部と尾部銃塔、
左側射手も後方下部と尾部銃塔が操作できるようになっていました。

このため、銃塔1台操作用と2台操作用の2種類の、
コンピューターが積まれていました。
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担当を譲るには、銃座のコントロールパネルに付いているつまみを、
セカンダリーコントロール可能の位置にしておいて、
照準器のアクションスイッチを放します。

敵機がどの位置にいるのかを、
インカムを通して情報共有しながら切り替えていたと思われます。

このシステムにより防御火器の効果をさらに高める事ができました。


●射撃の手順と注意点

射撃の手順と注意点を説明します。

まずコントロールパネルの主電源をオンにして、
次に、コンピューターのスイッチをオンにします。

そして照準器を動かして、銃塔が正常に動作しているかを確認。
これは銃塔が見える射手が確認することになっていました。

次に、セカンダリーコントロールシステムが正常に動作するかを確認。

銃塔の動作確認が終わったら、機銃の試射です。
数発の短い連射しますが、この時周囲の機体に当たらないように注意が必要です。
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戦闘時の射撃の注意点として、照準器の操作は滑らかに行う事になっていました。
これは、照準器を雑に動かすとコンピューターの計算結果に狂いが生じ易いからです。

それから、別の敵機に狙い直す時は、
一旦アクションスイッチを放してから別の敵機に狙いを定めた後に、
アクションスイッチを押すようになっていました。

これも照準器を急激に振り回して、
コンピューターの計算が狂わないようにするためのようです。

ちょっとコンピューターのご機嫌をうかがいながら射撃していたみたいですね。

射撃するときは、バースと射撃と言う短い射撃を連続的に行うようになっていました。

これは、弾丸の節約とオーバーヒート防止のためです。
また結局その方が、命中率も高まるようです。

戦闘中は常にインカムで情報を共有するようになってました。


そして最後に、メイン電源はミッション終了まで切らないことになっていました。
一旦切ってしまうと、コンピューターの真空管が温まるまで時間がかかるから、
とっさの対応が出来ないからです。


●実戦での効果

このリモコン銃塔の実戦での効果はどうだったのか?

実戦での効果を評価するために、各銃塔にはガンカメラが取り付けられていました。

それで効果は確認できたのか?

ある搭乗員の手記によると、

30回のミッションの中で、尾部銃座射手が5機以上の撃墜を認定されて、
その他の射手が、合わせて10数機の撃破という戦果が認定されています。
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特に尾部銃座は、修正する量が少ないから撃墜率が高かったのは分かる気がします。

実際にどこから攻撃を受けたかのレポートがあって、
それによると、こんな感じで攻撃を受けています。
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前方と後方からの攻撃が多かったようです。
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日本側の記録では、前方上部からの攻撃が防御火器の銃弾に
当たりにくい位置とされていて、多用されたみたいですが、
かなりの技量を要する攻撃法で、
誰でもできるような攻撃法では無かったようです。

アメリカ側もこの攻撃が多用されたので、
すぐに前方上部の銃塔の機銃を2丁から4丁に増やしています。
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ちなみにB-29の銃塔からは、約2000フィート(約610メートル)
の距離から射撃を始めていたとなっています。

結構遠い位置から撃ち始めていますが、
敵が撃って来るより先に撃ち始めて、相手をひるませていたようです。

防御火器の目的は、
敵を撃墜するというより爆撃任務の邪魔をさせない事にあるとすれば、
誰でも偏差射撃が出来るB-29のリモコン銃塔は、
かなり有効に役割を果たしたと言えるでしょう。


●まとめ

B-29は、当時のハイテク技術の塊ですが、
その中でもリモコン銃塔装備の射撃管制システムには、
本当に驚かされます。

何と言っても1940年代初めに、これを実現していたのが驚異です。

アメリカは、実現可能だと判断したら徹底的に予算や人材を突っ込んで、
他国じゃ夢のような兵器を開発しています。

実用化してから大量生産して、最前線まで送り届ける兵站の力が圧倒的で、
搭乗員や射手の訓練施設も充実していました。

あらゆる分野の裾野が広くて、基礎工業力が高かったという事が、
リモコン銃塔に集約されていると思います。





B‐29操縦マニュアル
米陸軍航空隊
光人社
1999-07-01


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